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悪魔のくすり6

「アンドレ、お前、左目も見えるのか?傷ついていないのか?」
オスカルは横たわったまま、アンドレに手を差し伸べる。
「お願いだ、私の側に。灯りを持ってきてくれ。お前の顔をよく見たいんだ。私はどうやら動けないようだ。」
ろうそくは寝台より少し離れた台の上に置いてある。庶民よりかなり贅沢な使い方をされているが、なにせ伏せている人のいる寝室のため、少し離れればお互い表情は影となってしまう。アンドレは躊躇したが、オスカルの懇願に普段の冷静さが含まれているように感じ、戸惑いながら自分の背の方向に置かれた燭台を手に取り、彼女の元へ歩んだ。オスカルは食い入るように彼の瞳をみつめる。
「どこも傷ついちゃいないさ。目はいい方だし。よく見えてるよ。」
直視に耐えられず、アンドレは視線をはずす。青い瞳は彼だけをとらえ、真剣に何かを考えているようだったが、そこには涙の跡が残ったままなのが痛々しかった。
「・・・どういうことだ・・・」
青い瞳の持ち主は、ふと身辺に視線を向けた。
「ここは、私の部屋?どうして?」
「どうしてって、お前・・・だから今日、王妃様からの命で調べていた、女祈祷師のエベーラという女の館を訪ねて、変な薬をかがされて倒れたお前を連れて帰ったんだよ。半日眠っていたから、もう夜さ。」
「今日・・・?」
「本当に覚えてないのか?」
心配そうにアンドレは尋ねる。が、オスカルは首を振った。
「いや、覚えている、たしか・・・お前と二人であの女の所を訪ねたのだが、偶然ル・ルーとロザリーに出会ったのだ。そして私一人が奥の部屋に招き入れられて、妙な香を嗅いだせいで意識が遠のいたんだ。そしてあの女の悪事はル・ルーのおかげもあって暴かれた・・・だが、私が覚えているのは、お前が私をかばい・・・撃たれ・・・いや、それだけじゃない。私はお前の左目を奪い、傷つけ、そして、この寝台の上でお前と・・・」
「オスカル?」
だんだんと苦しげになるオスカルのつぶやきは、アンドレにとって理解不能なものとなっていった。オスカルは自由に動かない手をゆっくりとかかげ、見つめる。
「血に染まっていない・・・私もバスティーユで撃たれて、意識が薄れる中、やっとお前の側に行けると願ったのだが、あれこそ夢だったのか・・・?いや、夢なんかじゃない。お前とやっと一つになり、それを半身が剥がされたように奪いとられた、あの痛み・・・」
「オスカル!」
アンドレは強く名を呼んだ。
彼女を現実に呼び戻したかった。
気がふれたのかと見まごうような彼女は、はかなげでせつなげだった。
そして、アンドレにゆっくりと視線を向ける。
「分からないんだ、アンドレ、私がどうなってしまったのか・・・どうなってしまうのか・・・心細くてたまらないんだ・・・でも、お前がいてくれる。傍にいて・・・ここにきて・・・抱きしめてくれ・・あの夜のように、アンドレ・・・」
そこには軍人ではなく大貴族の跡継ぎでもない、ただ一人の、男性にすがろうとするただ一人の女の姿があった。
「アンドレ、私を愛して・・・」
「いいのか・・・オスカル」
アンドレはじっと彼女を見つめ、ぐっと決意すると、一旦寝室を出て廊下に面した扉の鍵をかけた。そして手にしていた燭台を元の場所に置くと、寝台に近づき、ぎしっと音を立てながらオスカルの体に沿うように横たわる。オスカルは嬉しくてたまらないように、彼にすがりついてくる。アンドレは大きな体で、やさしく彼女を包み込む。
「お前がどうなってしまったのか、俺には分からない。お前の心が別の男にあったのは知っている。だが、これだけは分かるんだ。今こうすることが、オスカル、お前には必要なことなんだ。俺を必要としてくれている。だから、今夜一晩だけ、許してくれ。こう告げることを許してくれ。愛している、オスカル。」
そう言い切ると、彼女の体に自分の熱くなった体を重ね、深く口づけを交わした。薬の効き目が消えやらず自由にならないオスカルの衣服を脱がしていく。二人とも涙を流しながら、夜が更けていった。

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ありがとうございます!

お読み下さり、ありがとうございます。
全く何も考えずに書き始めたのですが、結末は決まっています。
不幸にはなりませんので、ご安心下さいね。


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kakonokaori

Author:kakonokaori
「ベルサイユのばら」の二次創作です。個人的な楽しみで執筆しております。原作関係者の方々よりクレームを受けた際には、中止します。お目汚しではございますが、お好きな方はご訪問下さいませ。

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