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悪魔のくすり12

「そうして、ロザリーお姉ちゃまを眠らせたあと、オスカルお姉ちゃまのご様子を見にお部屋に行ったら、鍵が掛かっていたの。だから、なんとなく、アンドレの前にもオスカルお姉ちゃまの生霊が現れたんだと思ったの。生きてても死んでても、アンドレを側に置かないわけがないんだもの。」
昨夜の出来事を語るながらル・ルーは、階段や廊下を軽やかに歩む。その後ろに続くアンドレは、言いようのない悪い予感に襲われていた。
・・・オスカルが血まみれに?そういえば、昨夜、あいつは血がどうとか言ってたな。いや、しかし・・・
「ル・ルー、寝ぼけていたんじゃないか?オスカルは昨日、その・・・」
意識が戻っていたと言おうとして、言いよどむ。
オスカルを抱いてしまったことを悟られるわけにはいかなかった。
「その、よく、眠っていたし。」
ムリになんでもない表情を作りだすアンドレに、くるりと振り向いたル・ルーは眉を寄せてみせる。
「うそはだめよ、アンドレ。私、知っているんだから。」
立ち止まり、腰に手を当てて怒りながら彼女は言った。
「ひょっとして、アンドレもお姉ちゃまにムリヤリ、一緒に天国に連れていかれるかもしれないから、心配してずっと扉の前で見張っていたのよ。・・・ちょっぴりうとうとしてたけど・・・そしたら、扉が開く気配がして、廊下の角に隠れて見ていたら、アンドレが生きたまま現れたのでほっとしたわ。なんだか、すっごく落ち込んだ顔をしてたけど。そして、アンドレ、お部屋を出ようとしてまた中に戻ったでしょう。オスカルお姉ちゃまの名前を呼びながら、するとお部屋の奥からオスカルお姉ちゃまの小さな声が聞こえたの。なんだかすごくかぼそいくて、お姉ちゃまらしくない声で・・・」
アンドレはうつむいた。

日の出の前、館の者誰にも見つからないよう自分の部屋に帰るようにオスカルに懇願されて、彼は後ろ髪をひかれるように、愛しい女の寝室から離れた。だがまだ暗い廊下に出た途端、これが彼女の初夜なのだと思うと、あまりの残酷さに苦しくなったのだ。
本来は皆に祝福されながら華やかな婚礼を上げ、恥じらいながらも神に認められた夫婦として、体も心も結び付けあうはずだったのだ。そして若夫婦として新床で朝日が差し込む中で、目覚め、微笑みを交わすはずだったのだ、幸せな女性として。
それなのに、彼女の純潔を奪った男は、まるで盗人のように人目につかず、暗闇に紛れてこの部屋を後にしなければならない無慈悲な現実。
「オスカル!」
踵を返し、アンドレは再びオスカルのもとに走った。そして驚く彼女の耳元でささやいた。
「お前こそ、忘れないでくれ。俺は未来永劫、お前のものだ。俺の命など、いくらでもくれてやる。愛している、オスカル。」
「アンドレ・・・」
オスカルは微笑んだ。
「ああ、そうだ。お前は私のものだ。それは神がお決めになったことだよ。気づくのに長い時間がかかってしまったけど・・・大丈夫だから、部屋に戻れ。また後で来てくれるね。」
・・・そのオスカルの言葉を、アンドレは思いかえす。

ル・ルーは今度は悲しそうな顔になった。
「アンドレがお姉ちゃまのお部屋から出た後、私、こっそりお姉ちゃまのお部屋に入ったの。びっくりさせようと思って。そうしたら、オスカルお姉ちゃま目覚めてたけど、お部屋に入れなかったの・・・」
「・・・なぜだい?」
アンドレが黒い瞳で、ル・ルーの顔をそっと覗き込むと、彼女は困ったように首を傾げた。
「お姉ちゃま、ベッドの上で横になったまま祈ってたの。涙を流しながら。・・・あれはル・ルーの知ってるお姉ちゃまじゃないのよ。何かに取りつかれてるんだわ。」

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「ベルサイユのばら」の二次創作です。個人的な楽しみで執筆しております。原作関係者の方々よりクレームを受けた際には、中止します。お目汚しではございますが、お好きな方はご訪問下さいませ。

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